飼育用ペット舎として使っているテラスに直行し雌ペットに鳥の卵をあたえた。
しばらくするうちペットは非常に腹をすかして鼻をならしひっきりなしに鳴きつづけた。
遠くからすでにその鳴き声を聞きつけていたか耳を立てて心配そうな表情をして近寄ってきた。
ペットの視力は弱く知力も我々の子どもは1匹もいなくなっていないことを理解するほど鋭くはなかった。
中から聞こえるもの哀しい鳴き声は雌ペットの母性本能をすっかり刺激した。
雌ペットは姿のみえない子ペットも我々の子どもの一匹だと理解したからである。
飼い主はペットを取り出しそれを連れていくことを願いながらテラスの真ん中の地面においた。
哺乳家畜の母親に見知らぬ子どもを拾わせようと望むならば巣の外にそれをおきできるだげ弱々しそうにみせるというのがいつも当を得ている。
みじめな姿で巣の外に横だわっている小さくて弱々しい生き物はすでに巣のなかに入っているものよりもずっと強く雌の育児本能を掻き立てるものだ。
もし小さな見做し子が巣の外に捨てられていれば養母はその捨子を優しくベッドに連れていく可能性か強いが我々の子供達の中に混じって見つかればそれは侵入者と見做され貪り食われてしまう。
この種の行動はある程度まで人間のものの見方からしても理解できる。

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見知らぬ子どもが巣に連れていかれてもそれが最終的に拾われたのだという保証にはならない。
ネズミのような下等哺乳類では巣の外にいる見慣れぬ子どもは連れこむ反応をおこさせるか巣のなかに入った後では侵入者とされて無慈悲にも食われてしまうという事が屡起こる。
さらに反射的で人間の立場から見るともっと辻褄か合わないのは多くの鳥にみられる母性的な救出反応である。
たとえば我々の子どもをひき連れているカモに実験者の手の中で絶望的に助けを求めて鳴き叫んでいるマガモの子どもを見せるとカモの母親はすぐに驚くべき勇気をみせて実験者に攻撃を加えその手からマガモの子を文字どおりもぎ取ってしまう。
しかしそのすぐ後で救出された子ガモがカモの雛の中に紛れ込もうとすると母ガモはそれを攻撃しうまくいかないとなるとたちまち殺してしまう。
この矛盾した行動の説明はまったく簡単である。
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ところか幼いマガモのうぶ毛の生えた姿態はカモのそれとは見るからに異なりそのためにマガモの子は雌ペットの子どもたちのなかでは部外者と認められ母親にこれも本来反射的なひな防衛反応を掻き立てる。
そこではマガモは救いを求めている子どもではなく急に追放さるべき敵に変わってしまう。
ペットのように高度な知的発達をとげた哺乳家畜でさえも相反する行動への衝動の似たような葛藤が反射的に誘発されることはきわめて起こりうることである。
小さいペットの子どもが草の上に置かれて鳴いていたのでは明らかにそれを巣に連れていく積りで急いで近寄ってきた。
雌ペットは始めは其れが本当に我々の子であるかどうかを確かめる為立ち止まって嗅いで見ようともしなかった。

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